スタートアップ採用は難しい?成功のために知っておきたい8つのポイント|Build+ × Endeavor AMA

日本での採用は一筋縄ではいきません。特に「スタートアップの採用は難しい」と感じる経営者は多く、求人を出しても応募が集まらない、優秀な人材が大手志向で動いてくれない…といった悩みが絶えません。

でも、大企業のような潤沢な予算がなくても、スタートアップにはスタートアップならではの強みがあります。

先日のBuild+ × Endeavor AMAイベントでは、創業者たちが日本でチームを作る上でのリアルな学びを共有しました。ここでは、その中から スタートアップの経営者や、スタートアップで働きたい人が知っておくべき8つのポイント をまとめています。

 
 
 

1. ビザサポートは「難しい」より「根気」

スタートアップ経営者の多くが最初にぶつかる壁のひとつが「外国籍人材の採用=ビザが難しい」という思い込みです。確かに、日本のビザ取得には時間がかかりますが、実際には「不可能」ではなく「準備と根気」がポイントです。

  • 平均的なプロセス:
    在留資格認定証明書(COE)の取得から最終的なビザスタンプまで、通常は4〜6ヶ月を要します。特にパンデミック以降は審査に時間がかかる傾向があります。

  • 企業規模による違い:
    大企業や上場企業は書類の整備が進んでいるため比較的スムーズですが、スタートアップやM&A直後の企業は、追加で 納税証明書、従業員数の推移、決算書 などの書類提出を求められることがあります。

  • 国籍による影響:
    例えばフィリピン国籍の候補者は、自国政府から「海外就労許可」を得る必要があるため、企業側の想定よりもプロセスが長くなることがあります。他の国籍でも、独自の要件を持つケースがあるため注意が必要です。

  • 採用への影響:
    この期間、候補者は不安を抱えやすく、企業側も「本当に来てくれるのか?」と揺れる場面が出てきます。ここで信頼関係を築けるかどうかが、最終的な入社意思決定に大きく関わります。

💡 Tip: 早めに候補者と一緒に準備を進め、経験豊富なリクルーターに頼るのが安心。

 

2. 採用予算が少ない?シニア人材が逆に狙い目

スタートアップにとって「予算が限られている」というのは避けられない現実です。そのため、真っ先に「若手なら給与を抑えられる」と考えてしまいがちです。ですが、実際には 経験豊富なシニア人材こそ、コスト以上の価値をもたらすケースが多い のです。

  • なぜ若手だけに頼ると危険か?
    若手はポテンシャルが高い一方で、指導・教育に時間とリソースがかかります。スタートアップはスピード勝負のため、育成に工数を割くと事業推進が遅れるリスクがあります。

  • シニア人材の強み:

    • パターン認識力: 過去の経験から「このやり方は失敗する」という判断が早く、無駄を減らせる。

    • リスクマネジメント: 多少の不確実性があっても、どこまで攻めていいかの勘を持っている。

    • 信頼感: 投資家や大手顧客との交渉において「安心感」を与えられる。

    • 即戦力: 入社初日から成果を出せる場合も多い。

  • 意外なポイント:
    シニア人材の中には「給与」よりも「やりがい」や「社会的インパクト」を優先する人もいます。特に、大企業を経験した後に「もっと小さな組織で自分の力を試したい」と考える人材は、スタートアップに強い関心を持っています。

  • 候補者の見極め方:
    全てのシニアがスタートアップにフィットするわけではありません。
    ✅ 変化を楽しめるか
    ✅ 権限や役割が曖昧でも動けるか
    ✅ ミッションに共感しているか
    こうした「マインドセット」を確認することが重要です。

💡 Tip: 年齢や給与だけでなく、ミッションへの共感を軸に採用を考える。

 
 
 

3. 会社カルチャーは「定義」しよう

「日本の会社文化」というと、終身雇用や年功序列、上下関係の厳しさなどが連想されがちです。しかし実際には、会社ごとにカルチャーは大きく異なります。スタートアップにとって重要なのは、「日本企業だからこうだろう」と思い込むことではなく、自分たちの組織のカルチャーを明確に定義すること です。

  • なぜカルチャー定義が必要か?
    採用においてカルチャーは「隠れた評価軸」となります。言語化されていないと、面接官や候補者ごとに認識がバラバラになり、ミスマッチを招くリスクが高まります。

  • ありがちな抽象表現:
    多くの企業が「チームワークを大事に」「オープンなコミュニケーション」などと掲げます。しかし、その具体的な意味が不明確だと、候補者は入社後に「思っていたのと違った」と感じてしまいます。

  • 具体化の方法:
    例えば「良いコミュニケーション」とは、

    • Slackでの即レスなのか?

    • 週次レポートをきっちり提出することなのか?

    • 課題があれば遠慮なく上司に直言することなのか?
      このように、行動レベルで定義すること がポイントです。

  • スタートアップ特有のポイント:
    初期の組織では、カルチャーはそのまま創業者の価値観や行動様式が色濃く反映されます。もし創業者が「とりあえず」で走っていると、会社全体も「曖昧な文化」に染まってしまいます。

  • 採用への影響:
    明確に定義されたカルチャーは、候補者にとって「自分がここで活躍できるか」を判断する手がかりになります。逆に曖昧だと、入社後のギャップが大きくなり、早期離職につながりやすくなります。

💡 Tip: 書き出して明文化するだけで、採用のミスマッチは大きく減る。

 

4. 面接は「システム」として設計する

スタートアップの採用面接でよくある失敗は、「なんとなく」 で進めてしまうことです。創業者や現場メンバーが順番に候補者と話すだけでは、同じ質問が繰り返されたり、評価基準がバラバラになったりしがちです。その結果、候補者は「時間を無駄にされた」と感じ、企業への信頼が下がってしまいます。

  • よくある課題:

    • 各面接官が似た質問をしてしまい、候補者が飽きてしまう

    • 面接官の評価が感覚的で、比較できない

    • 候補者への説明不足で、不安を与えてしまう

  • 面接をシステム化する方法:

    • 評価項目を明確化: そのポジションに必要なスキル・マインドセットを3〜5個に絞り込む。

    • 役割分担: 面接官ごとに担当する評価項目を割り振る(例:Aさんは技術スキル、Bさんはカルチャーフィット)。

    • 統一フォーマット: 評価シートを用意し、具体的な質問と回答の記録を残す。

    • 候補者への透明性: 面接プロセスを事前に説明し、「どの段階で何を見ているか」を伝える。

  • スタートアップにとってのメリット:

    • 時間短縮: ダブりが減り、意思決定が早くなる。

    • 公平性: 面接官ごとに基準が揃うため、評価の一貫性が高まる。

    • 候補者体験の向上: 「きちんと準備されている会社だ」と印象づけられる。

  • 候補者視点での重要性:
    面接は単なる選考の場ではなく、候補者にとっては「その会社のカルチャーを体感する瞬間」です。面接の進め方ひとつで「この会社は混乱している」とも「この会社は信頼できる」とも思われます。

💡 Tip: 面接は評価だけでなく「会社のブランド」を示す場。候補者の時間を大切に扱うことで信頼が高まる。

 
 
 

5. オファーはスピード勝負

どれだけ面接で手応えがあっても、オファー段階で候補者を逃してしまうケースは非常に多い です。その大きな原因のひとつが「スピード感の欠如」です。スタートアップに限らず、採用市場はスピーディーに動いており、候補者は複数社から同時に声がかかっていることが珍しくありません。

  • よくある失敗例:

    1. 面接後、意思決定に時間がかかりすぎて候補者が別企業に決めてしまう

    2. 条件調整に時間をかけすぎて「この会社、本当に自分を採りたいのかな?」と候補者に不安を与える

    3. 内定連絡が口頭のみで、正式なオファーレターを送るまでに数週間かかる

  • スピードが重要な理由:
    採用は「熱量」が勝負です。候補者が「ここで働きたい」と気持ちを高めた瞬間にアクションを取らないと、その熱は一気に冷めてしまいます。一度下がったモチベーションを取り戻すのは困難です。

  • 成功するための工夫:

    1. 事前準備: 面接を始める前に、給与レンジや福利厚生を社内で承認済みにしておく。

    2. オーナーシップ: オファープロセスを主導する担当者を1人決め、他の業務と並行させない

    3. 時間基準: 内定を出すと決めたら、48〜72時間以内 に正式な書面を送る。

    4. 透明なコミュニケーション: 条件交渉が必要な場合も、候補者に「調整中です、いつまでに回答します」と明確に伝える。

  • 候補者心理:
    スピードが遅い=「優先度が低い」「他の候補と比較して迷っている」というサインに受け取られやすいです。逆に素早い対応は「この会社は自分を本気で欲しがっている」と強い安心感につながります。

💡 Tip: オファーは「熱意」を示す場。スピードと明確さで信頼を勝ち取る。

 

6. ディープテック人材は「探しに行く」

エンジニア採用が難しいのは周知の事実ですが、その中でも ディープテック領域(バイオテクノロジー、フォトニクス、クリーンルームエンジニアリングなど) の人材は特に入手困難です。彼らは一般的な求人サイトやLinkedInにほとんど姿を現しません。だからこそ、スタートアップは「待つ」採用ではなく「探しに行く」姿勢が求められます。

  • なぜ見つからないのか?
    ディープテック人材の多くは、大学の研究室、大企業のR&D部門、あるいは学術プロジェクトに深く関わっています。日常的に転職市場をチェックしていないため、従来型の求人広告だけではアプローチが届きません。

  • 効果的なアプローチ:

    1. 業界マッピング: 学会、技術系協会、研究プロジェクト、競合企業をリスト化し、どこに人材が集まっているかを把握する。

    2. イベント参加: カンファレンスや研究発表会に足を運び、直接ネットワークを築く。

    3. プロジェクトの節目を狙う: 大型研究プロジェクトの終了時や、資金が打ち切られたタイミングは、人材が市場に出やすい瞬間。

    4. リファラル活用: ディープテック人材は狭いコミュニティでつながっているため、1人の紹介から大きなネットワークにアクセスできる。

  • スタートアップの強みを活かす:
    ディープテック人材は、最先端の研究に携わりたい一方で「自分の成果を社会実装したい」という思いも持っています。スタートアップは「スピード感を持って社会にインパクトを出せる」という点で、大企業よりも魅力的に映ることがあります。

    注意点:
    高度専門人材ほど、短期的な年収アップだけでは動きません。企業の ビジョン、研究テーマとの親和性、社会的インパクト が意思決定の大きな要因になります。

💡 Tip: 採用枠が出る前から関係性を作る。信頼がネットワークを広げる。

 
 
 

7. 日本の労働市場はシフト中

かつて日本の労働市場といえば「終身雇用」「年功序列」「会社への忠誠心」が当たり前とされてきました。しかし近年は、その常識が大きく揺らいでいます。とくに若い世代やグローバルな経験を持つ人材は、柔軟性・働きがい・国際的なキャリア を優先する傾向が強まっています。

  • リモートワークが分岐点に:
    パンデミック期にはリモート・ハイブリッド勤務が普及しましたが、最近では大手企業がその制度を縮小・廃止する動きもあります。これに不満を感じ、「もっと自由度の高い環境で働きたい」とスタートアップに目を向ける人材が増えています。

  • キャリア観の変化:
    以前は「安定」を重視する人が多かった一方、今は「自己成長」や「社会的インパクト」に魅力を感じる人が増えています。特に20代〜30代の層は、「一つの会社に一生勤める」よりも「経験を積んでキャリアを広げる」ことを自然に受け入れています。

  • グローバル経験人材の存在感:
    留学や海外勤務経験を持つ人材、またはバイリンガル人材は、スタートアップにおいて非常に貴重です。彼らはリスクを取ることに慣れており、「挑戦する環境」に惹かれやすい特徴があります。

  • スタートアップが勝てるポイント:

    • 柔軟性: フルリモートやフレックスタイムは、大手が制約を強めるほど魅力的に映る。

    • スピード: 自分の仕事が会社の成長に直結する感覚を味わえる。

    • 目的意識: 社会的課題解決や新しい価値創造に携われる。

  • 候補者心理:
    大企業を辞めることに不安を感じつつも、「現状に不満がある」「もっと力を発揮したい」と考えている人は少なくありません。スタートアップが「あなたの力が直に活きる」と伝えることで、その一歩を後押しできます。

💡 Tip: フレックス、ハイブリッド、ミッション性を前面に出せば、大手と差別化できる。

 

8. ミスマッチ採用も「学び」に変えられる

どれだけ入念に採用プロセスを整えても、「思ったよりフィットしなかった」 というケースは避けられません。スタートアップにとって1人の採用が大きな影響を持つ分、ミスマッチは痛手に感じられますが、必ずしも「失敗」で終わる必要はありません。

  • よくある誤解:
    「日本では解雇はほぼ不可能」という声を耳にしますが、実際には正しい手続きを踏めば対応は可能です。問題は「準備不足」や「記録がないまま突然解雇を検討する」ケースで、それがトラブルの原因になっています。

  • 予防策としてできること:

    • 30/60/90日ゴールを設定: 入社直後から「どのタイミングで何を達成してほしいか」を明示する。

    • 定期的なチェックイン: 月次や週次で進捗を確認し、困りごとを早期に発見。

    • 支援の記録: 研修やサポートを行った内容を必ず残すことで、後の対応がスムーズに。

    • 早期是正: 問題が見えた時点でフィードバックをし、改善のチャンスを与える。

  • 有期契約に頼らない:
    「試しに契約社員で」と考える企業もありますが、法律上は実態が「常勤・継続的業務」であれば正社員に近い扱いとなる場合もあります。安易に逃げ道として有期契約を使うのはリスクが高いです。

  • ミスマッチを学びに変える:

    • その人材の強みを活かせる別のポジションを検討する

    • キャリア相談を通じて、本人が輝ける環境を一緒に探す

    • 結果的に退職となっても「円満な出口」を用意すれば、会社の評判に悪影響を残さない

  • 組織にとっての意味:
    ミスマッチは「採用失敗」ではなく「組織改善のヒント」でもあります。「なぜ合わなかったのか」を振り返ることで、次の採用要件をより明確にできます。

💡 Tip:「合わなかった」こと自体が問題なのではなく、「合わないことに早く気づけるか」「改善の余地を与えたか」が重要です。誠実で透明性のある対応は、会社と従業員双方を守り、結果的にスタートアップの信頼性を高めます。

 

まとめ 

日本や海外での採用は難しく見えますが、実際のハードルは「不可能さ」ではなく、プロセスとコミュニケーションの不備 にあります。

  • カルチャーを定義する

  • 面接をシステム化する

  • オファーでスピード感を示す

  • 専門人材とは早めに関係性を築く

スタートアップにとって採用は、成長の基盤そのものです。これらを実践できれば、規模に関わらず「強いチーム」を築き、未来を切り拓くことができます。

もし採用を考えているスタートアップ経営者の方、またスタートアップで働きたい方は、ぜひ私たちBuild+と一緒に次の一歩を踏み出しましょう。

 
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